いもぐい

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インクレディブル・ファミリー (2018)


まさか14年を経て前作とピッチリ地続きのタイムラインにしてくると思ってなくて、びっくりしちゃった。


ものすごく時流を考えた作品だね。
でもフェミニズムフェミニズムしてないから、バランス感覚がうまい。

前作でのイラスティ・ガールの「女の子、がんばろう!」っていう言葉をよく忘れずに、眼前に実現してみせたものだなぁと感心してしまった。

女性ヒーローvs男性ヴィランとすると、フェミニズムがあまりに強く香ってくるものだからポリコレ色に塗れて作品としての面白さが減ることがあるけど、
この作品は女性ヒーローvs女性ヴィラン、しかも一時はシスターフッドを組みかけた2人が、ヴィランの悪巧みが露呈した瞬間、己の正義に基づいて戦うって胸熱展開だった。こういう構図を取ってる作品、もといアニメ作品はまだなかなかないものだと思う。


ボブの夫、父としての男らしさの観念に由来した独りよがりな頑張り方が、すごくリアルじゃなかった?

悪意も暴力的な圧もなく、ただ自分が育ち、慣れてきた「男が家族を守るもの」っていう観念に基づいて、妻のポテンシャルを「女だから」という決めつけによって知らず知らずのうちに邪魔している。

フィクショナルな劇的なセリフの応酬や喧嘩のシーンもなく、ヘレンがイラスティガールとしての活躍を嬉々として電話してきた時、TVのチャンネルを回しながら絶望にも近い虚無感とフラストレーションに苛まれているシーン。

非情に電話を切るのでなく、あくまでかんじょうを抑え(る努力をし)て話を聞くところ。リアルだ…と思いました。


あらゆる差別や不平等は、それぞれが生まれ育った環境に起因することが多くて、でもふとした瞬間に生まれたその状況への疑問をきっかけに、少しだけ態度や役割を変えてみるとじつはお互いとても楽になることがあるんだよって、囁いてくれているような映画。

14年醸成させた甲斐のあった次作だったと思う。