ボヘミアン・ラプソディー (2018)
あんだけ話題になったんだから観とかなきゃなという義務感:クイーンの曲でアガりたい=4:6の気持ちで観た。
特にファンというわけでもなく、数曲知っている程度なのでバンドやメンバーの歴史を知ってるわけじゃない。
だからフレディ・マーキュリーの両親がインド系であることやザンジバルからの移民であることなども全く知らなくて、えっそうだったの!?の連続だった。
意外とそういう人多そうだ。それとも一般常識なのかな。
バンドとして有名になるまでの前半の展開が早くて、あと1時間半近くあるけどどうすんだろと思ってたら、有名になってからが大変だったんだね~...。
猫がいちいちかわいくて救われたのだけど、メアリーから妊娠を伝えられた時に「どうしてそんなことが...」って思わず呟いたシーン、あれはものすごく切なく厳しいものがあったな。
メアリーは一体どんな気持ちだったんだろうか。完全なる想像だけれど、1人の友人として喜んでほしかったんじゃなかろうか。
その部分は詳しくは書かれていないけれど、フレディーは長男の名付け親となったらしい。
映画内では書かれなかった、その後の2人の関係も下記のリンクに載っている。
「メアリーは僕の唯一の女友達だ。他に女友達はいらない」と彼は『ニューヨーク・ポスト』紙に告白している。「僕にとって彼女は内縁の妻なんだ。結婚しているのと変わらない。僕たちはお互いを信じているし、それで十分だ。メアリーに惚れたように、男に惚れることはできないと思う」(太字引用)
この作品を見た限りではてっきり2人は結婚していたのだと思ったら、実際は婚約に留まっていたのだそう。
女友達、内縁の妻。自分で自分の幸せをつかみにいったメアリーは偉い。
セクシュアリティだから、責められない。フレディーが悪いわけではない。そう分かっていても、並の精神力だったら、持ち崩してしまいそうだ。
ライブエイドのシーンは劇場公開中から素晴らしいと絶賛の嵐だったけれど、噂に全く違わなかった。
観ている最中、母が「そりゃ(ラミ・マレックが)賞取るわ」と言ってようやく今観ているのはラミ・マレックが演じているフレディー・マーキュリーなんだと思い出した。
映画を観ていることも、ライブ映像でないことも、彼がフレディー本人でないこともすっかり忘れて観入っていた。
圧倒的な演技だった。演技っていうより、憑依。ラミがラミに見えない。完全にフレディー。
体格も顔も人格もすべて違う人間が、あんなにも本人に見えることってあるんだなと驚いた。演技の力、俳優の力、映画の力を見せつけられた気がする。
それにしても、クイーンの曲の数々やライブエイドなど、当時は生きることを勇気づけ、助け合うっていうサポーティブな空気が音楽業界のなかに溢れてたんだね。
ブライアン・メイは辺野古埋め立て工事の一時停止への署名ツイートや、早くからのsocial dindanceとstayauhomeを勧めるインスタポストなど、良心的なセレブリティなんだなと思っていたんだけど、当時のバンド内でもそういう導くような役割を果たしていたんだなーということがよく分かった。
社会的な問題を積極的にトピックに挙げ、サポートする姿勢は当時も今もまったく変わっていないわけだ。
素晴らしいよね、特に今みたいな時期だと、ものすごく頼もしい。
今でもエルトン・ジョンや、若い世代ではビリーアイリッシュやラウヴなどなど、フードバンクへの寄付やstayathomeのサポートとしてライブ配信したり、マインドはまだ残ってるよね。
最近ではこんな記事もあって、実現はまだもう少し先だろうけども是非やってほしい。
テレビで見た、昔の世界の物理的・精神的生きづらさや殺伐さが、今現実として新たな課題としておおきく横たわってることを、自覚しなきゃいけないよな。
そしてそれに立ち向かおうとインスパイアしてくれるクリエイターしか応援したくないなと、心から思います。
仮にも政府におもねったり、やわらかい聞こえのいい言葉で同調を強制する人は、絶対に推さない。
人間のクリエーションが持つ力を信じてつくる人たち、それを愛した大衆がいた時代があったってことが、深く伝わる作品だった。
しんどい時代は姿を変えてめぐってくるから、そんなときこと人間の力を思い出したい。
最後に、素敵な映画って、アフターストーリーさえ素敵っていうのが世の摂理になっているのだろうか。そんなアホみたいなことを信じたくなる展開がここにある。
なんとまあラミの恋人が、メアリー役のルーシー・ボイントン。
そういえばアカデミー賞授賞式のオフショットでタイ直されてたわ...!
スピーチも素晴らしい。移民という共通のバックグラウンドを持ち、互いが互いの歴史をかたることになったんだなあ。
あれだけ壮絶に演じてみせた人間が、こんなに愛らしく笑っているし、人間の力はまったくすごいなと思わざるを得ない。