いもぐい

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▶『あなたのことはそれほど』(2012)


これはあとがきで語られていたのだけど、キャラがくそばかりだと言われていたらしい。

あなたのことはそれほど(1) (FEEL COMICS)

あなたのことはそれほど(1) (FEEL COMICS)

まあそれには違いないんだけど、少なくとも理解できるクソさではあった。
いくえみ綾さんは同じくあとがきで、この作品では不倫モノが描きたかったわけではなくて、
そういう状況になった時に人がどう動くのかを描きたかったとおっしゃっている。

なるほど、である。
私はキャラクターに対して嫌悪感を抱かなかったのは、そのせいだと思う。

本作は浮気を肯定している明けでも過度に否定しているわけでもない。
ただただそれぞれの人間の選択で、様々な方向に彼らの人生が振られていく。

主人公の美都の気持ちが、よく分かる。
中学の時に恋に落ちた相手が相変わらずかっこいいままで居てくれたって、それだけで奇跡みたいなもんだ。
それで自分もそれなりの見た目になって、人生経験もそれなりにして、今度こそ自信をもって話せるから、
そんな自分を憎からず扱ってくれたら、落ちないわけがない。

むしろ落ちないと、過去の自分に申し訳が立たない。
悲しかった過去の私が浮かばれるように。将来は幸せになれるよって示してあげたい。

美都は、満足できない人間なんだと思う。
夢見がちで我侭で美人で、そしてなにより行動力があったから間違いを冒したわけだけど。
彼女、たぶんあまり反省してない。有島が彼女の人生の絶対的な聖域であり続けて、
彼女の中でそれ以上の男性はいないから再犯するとは思わないけれど、
人を傷つけたことは自覚しているし申し訳ないとは思っているだろうけど、後悔はしていないんじゃないか。

だって後悔したら、有島との関係を否定することになるから。
多分してないよ。そんなタマじゃないよ、彼女。もうちょっと大胆不敵。

満足できないという点のみにおいては個人的に共感しかないのだけど、
幸いなのは私が怠惰で行動が無いことだ。よかったと思う。本当に。


一昨日読んでから昨日今日としばらくえらく気分が落ち込んでいたんだけど、
そういえばこの心の気持ち悪さって『あなたのことはそれほど』を読んでからはじまってないか?とさっき気づいた。洗濯物を干しながら。

元カレが何度か夢に出てきていた。夢の中でも、現実と同じく私は彼を憎んでいたこともあったけれど、
昔のように仲良くしていたことが大半で、夢から覚めるたびフラストレーションが溜まっているのかと疑った。
でも最近はそれもなく、ここ3日くらいは知らぬ男前とイチャつく夢ばかり見ていた。
現実がくそなので、寝ているのが一番いいなと思っていた。お金かからないし。

昨日Facebookで、ある友人とFacebookで繋がってから3周年だという通知がきていた。
Facebookはアカウントは持っているけど、全然使ってない。むしろ嫌い。使いにくい。
ログを遡りにくい。検索しづらい。

そんななので、Facebookを開く時は大学時代の知り合いなどが今どんなことをしているか知りたい時、つまり自分で自分の精神を傷つけたい時で、昨日がそうだった。
そうしたらそんな通知がリアルタイムで来て、ああそう、と思った。

思えば元カレと付き合った時から、私は本当はその知り合いの方と付き合いたかった。
彼は年下で、政治に関するものの見方とか、思想がよく合った。
ちゃんと怒っていたし、むこうみずで真面目で時々びっくりするくらい抜けていて、好感が持てた。
音楽の趣味もあった。友人が少ないので、音楽の話ができる人と会ったのははじめてだった。

でも彼は私と同い年だけど彼と同学年の子が好きで、告白してフラれたそうだ。
なんてもったいないことしたんだろう、私なら喜んで付き合うのになんて思っていたら、元々仲良くなかったその女の子とはすぐに疎遠になった。

元カレとの付き合いに関しては追追書くけれど、
今でもその知り合いの方と付き合えたらよかったのにと思うくらいの関係だった。2年付き合ったのに。

知り合いとは、もうなにも連絡を取っていない。
お互いどこにいるかもなにをしているかも知らない。
彼は多分、今年院を卒業するはずだ。
少し前に、アメリカに行ったらしい。プロフィールのアイコンが、良い写真に変わっていたから。

もし私が彼とまた出会っても、付き合うことも浮気することもないだろう。悲しいけど、絶対ない。
私には度胸もないし、彼だけは綺麗な思い出のままにしておきたい。
元彼との思い出はぐしゃぐしゃに汚してしまったから、せめて彼だけはキープしておきたい。
思い出で十分。

いくえみ綾、中学の時から大好きだけれど、読むたび心を良くも悪くもふるわせてくれる。